こんな疑問を持っている方へ記事を書きました。

理論株価ってどうやって求めるの?
と言う方々のために解説しました。
皆さんは”理論株価”ってどうやって出しているか知っていますか?
結論としては、理論株価の算出方法に定まったものはありません。しかし、M&Aの際に『事業価値』の視点と『株主価値』の視点で、それぞれ理論株価を算出する方法があります。
この記事では、
1.事業価値、株主価値それぞれの算出方法
2.算出した理論株価の注意点
3.その他の求め方
について解説します。
事業価値、株主価値それぞれの算出方法

事業価値から算出
EBITDAマルチプルを使った方法となります。
- 同業他社数社のEV/EBITDA倍率を求める
- 平均倍率を求める
- 平均倍率を対象企業のEBITDAを掛け合わせ、理論的なEV(事業価値)を算出する
- EVへ対象企業の非事業価値を加え、有利子負債を減算する
- 理論的な『株主価値』を一株当たりの株価へ換算する
【例】
1.複数社の EV/EBITDA倍率 を求める。
2.平均倍率を求める。
(5倍+6倍+4倍)÷3社 = 5倍
3.平均倍率から理論的な事業価値を逆算する
(理想的な事業価値)÷200憶 = 1000憶
4.EVへ非事業価値(現預金)を加え、有利子負債を減算する
1000憶 + 100億 -600憶 =500億
5.一株当たりに換算
500憶 ÷ 1憶株 =500円
第一優先は債権者
事業価値を算出し、現預金などを加算したものは、一体誰のお金なのでしょうか?
一般的には事業資金を貸し出している『債権者』とオーナである『株主』のお金となります。企業が解散した際には、債権者への返済が第一に優先されて行われます。そのため、”株主価値”となるお金は”有利子負債”を引いた額となります。
株主価値から算出
株価の価値を直接算出する方法となります。PERやPBRについてもマルチプル法を使って算出します。
マルチプル法は、業種などが類似した企業同士であれば同じになるという理論から成り立っています。
多数の、多角的な、複合の、多様な、倍数の、と言った意味で使われます。
今回の意味合いとしては『複数な』との意味を持ちます。
今回の株主価値の算出においても、EBITDAマルチプルと同様にして、同業他社から平均値を算出して、理論株価を算出します。
- 同業他社数社のPBRを求める
- 平均PBRを求める
- 平均PBRを対象企業の『BPS』を掛け合わせる
※(PERの場合は『EPS』を掛け合わせる)
【例】
1.複数社の PBR を求める。
800円÷800=1倍
※株価÷BPS ※時価総額÷純資産
2.平均PBRを求める。
(1倍+1.2倍+0.8倍)÷3社 = 1倍
3.平均PBRを対象企業の『BPS』を掛け合わせる
2,800円×1倍 = 2,800円
Book-value Per Shareの頭文字のことで、『1株当たりの純資産』 を指します。
Earnings Per Shareの頭文字のことで、『一株当たりの当期純利益』を指します。
算出した理論株価の注意点
今回紹介した3つ(EBITDAマルチプル、PER、PBR)の方法で算出する理論株価では、企業が持っている『強み』を十分に評価した方法でありません。
このことから、企業自身の本来の価値を算出するためには、将来の稼ぐ力の予測を評価するDCF法が望ましいとも言えます。
DCFは(Discount Cash Flow)の略で、「割引キャッシュフロー法」と表現されることもあります。簡単に言ってしまえば、将来生み出す予想できるCFを、現在価値に割り引いて評価する方法です。
割引価値についてこちらで記載しています。
その他の求め方
最初に書いたように、“理論株価”の算出方法は定められていません。そのため、各企業によって理論株価の算出方法が異なります。
定められていないからこそ、企業がどうやって理論株価を算出しているかブラックBOX化されています。しかし、『ダイヤモンドZAi』においては、理論株価を算出方法を明示しています。
今回は”ZAi”式の算出方法について紹介します。
ZAi式理論株 算出方法
算出式をザックリ表すと
『理論株価 = 資産価値 + 利益価値 + 成長価値』
となります。
この式を使うためには
業種・株価・BPS・EPS・売上の成長率
が必要となります。
- 資産価値を加算
前期末BPSを加算する - 利益価値を加算
一定期間のEPSを加算する - 成長価値を求め加算する
利益価値をEPS、売上高成長率2%である場合に成長分のみ加算します。
2年目:EPS×(1.02)-EPS
3年目:EPS×(1.02)^2 -EPS
4年目:EPS×(1.02)^3 -EPS
※年数については後述 - 合算する
1~3で出した値を合算します。
加算する成長分について
この式での異論が出そうなポイントは、EPSに何年分の利益価値と成長価値を加算するかと言うポイントです。これについては、ZAiによって業種ごとに年数が決まっています。
業種により加算する年数が異なる説明については「業種ごとに成長率が大きく異なるため、過去のデータを業種別に解析し、最適な将来利益の折り込み年数を設定」と説明しています。

まとめ
- 理論株価の決まった算出方法はない
- M&Aの場面では『事業価値』『株主価値』の視点で算出されている
- ZAiについては算出方法が開示されている
それでは、また!
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