こんな疑問を持っている方へ記事を書きました。

DFC法で出てきた”残存価値”ってどうやって求めるの?
と言う方のために解説しました。
皆さんは”企業価値の算定”ってどうやって出しているか知っていますか?
企業価値評価の中でも代表的な方法に『DCF法』というものがあります。DCFはDiscount Cash Flowの略で、「割引キャッシュフロー法」と表現されることもあります。
DFC法は、学術的なファイナンス理論に裏打ちされており、理論上もっとも合理的な企業価値評価法となります。
では、『企業価値』の算出方法は
“事業価値”、”非事業価値”の2つを加算したものが『企業価値』となります。
この記事では、
1.DFC法の算出方法
2.残存価値について
3.DFC法の計算例
について解説します。
DFC法の算出方法

【図に合わせた細分化式】
企業価値 = (事業価値 + 残存価値)+ 非事業価値
DFC法の算出方法は『事業』と『非事業』(その他)の2つに分けて考えます。
- 事業では、フリーキャッシュフロー(以下、FCF)の算出する年数と、最終年度以降の価値である”残存価値”を合計します。
- 非事業では評価時点で売却したと仮定した金額となります。
『事業』(事業価値)の算出
通常7~10年程度のFCF予測を現在価値に換算した価値(割り引いた価値)と、予測の最終年度以降の価値である“残存価値”を合計します。
“FCF予想値”も“残存価値”どちらも、割引現在価値と同じ考え方で算出します。
割引現在価値の解説はこちら
FCF算出方法の解説はこちら
PV = C ÷ (1+r)^n
PV:現在価値、 C:毎年の予測FCF
r:割引率、 n:年数
具体的にはこうなります。
FCFが100憶円、割引率が5%
<1年後に100億円>
100 ÷ 1.05 = 95.2億円
<2年後に100憶円>
100 ÷ 1.05 ^2= 90.7億円
…
<7年後に100億円>(最終年度)
100 ÷ 1.05 ^7= 71.1億円
最終年度までの合計金額
1年後+2年後+…7年後=578.7憶円
『事業』は先ほど計算した、“FCF予想値” と、最終年度以降の価値、つまり“残存価値”を加算して算出します。残存価値については次の“2.残存価値について”で解説します。
『非事業』(その他)
非事業価値を具体的な例をあげると、事業に使っていない遊休地や現預金などの事です。言い換えれば、その資産があろうがなかろうが、事業で稼ぐために、役立っていない資産のことです。
仮に、評価時点で売却した場合の金額を評価します。
貸借対照表(B/S)の『現預金など』(Cash and cash equivalents)参照
残存価値について
事業価値を算出する中で、最も金額が大きくなるのが残存価値(ターミナルバリュー)です。ターミナルバリューの考え方は3つあります。
3つの残存価値”ターミナルバリュー”
- 事業を清算する場合
- 事業を売却する場合
- 事業を継続する場合
一般的には3の『事業を継続する場合』での想定が多いです。こちらの記事では継続での残存価値算出を解説します。
残存価値の考え方 『継続』
“残存価値”を考える上で、重要な概念があります。
それは、考える視点(起点)を一度”FCF予想値”を算出した最終年が、現在だと仮定するひつようがあります。つまり、最終年へ視点の移行が必要です。
視点移行して残存価値を算出後に、今度は現在に視点を戻して、算出された残存価値を現在価値に換算する手順が必要となります。
- 最終年度に視点を変えて、残存価値を計算(視点移行)
7年後が最終年であれば、7年後が現在だと考える。具体的には現在から8年後が、1年後になり、9年後が2年後になります。 - 現在に視点を戻して、残存価値の割引現在価値を算出(視点帰還)
視点移行して算出した残存価値を、現在の価値へ換算します。具体的には7年後が最終年であれば、
残存価値 ÷(1+割引率)^7 となります。
残存価値『継続』の算出
残存価値『継続』の算出方法は2つあります。1つ目は、”FCF予想値”を算出した最終年度以降は永年に一定のFCFの場合。2つ目は、FCFが成長する場合です。
- 最終年度以降のFCFが一定
最終年度の次年度のFCF ÷ 割引率 - 最終年度以降のFCFが成長
最終年度の次年度のFCF ÷(割引率-成長率)
2つの計算式を出しましたが、2つ目の式に成長率を「0」とすれば、FCFが一定の計算式が現れます。
ここでいう成長率は、10年以降や8年以降から永年になりますので、超長期的な成長率となりますので、名目GDPの成長率や、業界全体の成長率など、マクロな視点で成長率を考えて決定します。
DFC法の計算例

- 事業価値の算出(FCF予想値+残存価値)
- 非事業価値の算出
- 事業価値へ非事業価値を加算
事業価値の算出
事業価値の算出は”FCF予想値”と”残存価値”を求めて、足し合わせることで導き出されます。
“FCF予想値” の算出
<算出例>
・期間7年後
・割引率が5%
・FCFが100憶円で翌年以降1憶円増加
PV = C ÷ (1+r)^n
PV:現在価値、 C:毎年の予測FCF
r:割引率、 n:年数
<1年後に100億円>
101 ÷ 1.05 = 96.2億円
<2年後に100憶円>
102 ÷ 1.05 ^2= 92.5億円
…
<7年後に100億円>(最終年度)
107 ÷ 1.05 ^7= 76.0億円
最終年度までの合計金額
1年後+2年後+…7年後=600.7憶円
“残存価値”の算出
<算出例>
・8年後のFCFを108憶円
・割引率が5%
・成長なし
- 最終年度以降のFCFが一定
108 ÷ 0.05 = 2,160憶円 - 割引現在価値に換算
2,160 ÷ 1.05^7 = 1,535.1憶円
FCF予想値と残存価値の加算
FCF予想値 + 残存価値 =2,135.8憶円
非事業価値の加算
貸借対照表(B/S)の『現預金など』(Cash and cash equivalents)参照して、加算します。
ここでは、5憶円とします。
事業価値 + 非事業価値 = 2,130.8憶円
ここで算出されたのが、DFC法を使った『企業価値』となります。
理論株価の算出方法
企業価値を算出した後に、”有利子負債”を減算します。そうして算出されるのが、”株主価値”となり、この額を”発行株数”で割ると、一株あたりの理論株価が算出されます。
詳しくはこちらの記事を参照ください。
まとめ
- 事業価値は”FCF予想値”と”残存価値”を合わせた金額
- 残存価値は永年分の事業価値を算出するため金額が大きい
- 残存価値を考える場合は視点(起点)を変えて考える必要がある
それでは、また!
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