みなさんは、好きな食べ物を先に食べますか?それとも後に食べますか?本書は、冒頭から資産運用の本質に迫った内容をテニスやゴルフに例えてわかりやすく書かれた書籍です。
第一章から得られる、知識の果実を味わい尽くすより前に読み進める度に、初めに得た知識に枝葉となる知識を吸収でき、読み終えた後にはインデックス投資の本質を深く理解する事が出来るでしょう。
この記事はこの書籍を”ギュッ”と凝縮して5分で解説しました。
著者と『敗者のゲーム』について
本書のタイトルにある敗者のゲームですが、これは資産運用をテニスに例えている所からとっています。
テニスには2種類のゲームがあり、一つはプロおよび天才的なアマチュアのゲームで、もう一つはその他大多数のゲームである
出典:敗者のゲーム 1章
~中略~
統計分析の結果、ラモ博士は次のように要約している。「プロは得点を勝ち取るのに対し、アマはミスによって得点を失う」
この書籍は1985年に初版が発刊され、2022年2月に8版が発売されました。
40年前の書籍が今なお読み継がれているのは、時代が変わっても色褪せない資産運用の本質を例え話で万人にわかりやすく書かれているからです。
著者:チャールズ・エリス氏
この著者であるチャールズ・エリス氏は1937年に生まれました。ロックフェラー基金、ドナルドソン・ラフキン・ジェンレットを経て1972年グリニッジ・アソシエーツ設立します。
その後、代表パートナーとして投資顧問会社や投資銀行などの経営・マーケティング戦略に関する調査やコンサルティングを手がけ、各業界トップ経営者の間で信頼を得ました。
アメリカ市場は”巨大化”し”最適化”された

この数十年で資産運用の世界がいわゆる『勝者のゲーム』から『敗者のゲーム』へゲームチェンジしました。その理由は株式市場の支配者が個人投資家から機関投資家へ変化したからです。
このキャプチャーは各国における株式市場参加者の割合です。

個人投資家が市場を支配していた時には年間1,2回程度の取引であったものが、機関投資家とコンピュータによる24時間売買が90%を占めています。
インデックス投資の強み
インデックス投資の強みは何と言ってもその運用コストです。
インデックスファンドはコストが低く、有象無象のアクティブファンドと比べ優れたリターンを上げることは言うまでもありません。
インデックス投資はウォーレン・バフェットやジョージ・ソロスも入っている優秀な投資家の集合体。
いわゆる『ドリームチーム』への格安投資となります。有名な上場投資である『VOO』へは経費率が僅か0.03%の手数料でそのオーナーになれるということになります。
アクティブファンドの真実

先述したように市場は機関投資家で溢れています。その機関投資家全員が、様々な情報を精査して市場平均に勝つ努力をしています。本書ではこの認識がそもそも間違っていると指摘しています。
その理由は『機関投資家=市場平均』であるからです。機関投資家の取引は取引所の99%を占めています。
運用機関の数が膨大で、能力が高く、顧客のために質の高いサービスを提供しようとするほど、市場平均は大多数の機関投資家の総意となり機関投資家自身となります。自分の右手で右手を攻撃できないように、自分自身に勝つことはできません。
それに加えて、アクティブファンドは手数料がインデックスファンドに比べて割高です。
例えば1.25%のコストを支払わなければならない商品では、市場平均は7%ありますので、アクティブファンドは年間で8.25%以上のリターンを上げないといけません。
(書籍では更にアクティブファンドの他の手数料について記述がありますが、こちらでは省いています。)
実際に1年以上の成績を見ると、約7割の投資信託が市場平均を下回り、10年では8割、15年では9割が市場に負ける結果となりました。
経資産運用の課題
インデックス投資を長期に渡り続けるには、2つの課題があります。
インデックス投資の注意点

書籍のインデックスへ投資する投資家に投げかける一部分を要約すると、『最も困難な課題は、相場の暴落期や高騰期にブレることなく適切な投資方針を貫く』ことだと著書しています。
市場が暴落した時に冷静さを保つのは容易ではありません。
しかし、市場が暴落している時に自分の基本方針を守り抜くことは困難であると同時に、最も重要な事です。
基本方針を作っていても守らなければ、意味が無く、そのダメージは計り知れません。相場の暴落期と同時に高騰期に長期投資を続けることは難しいです。
相場が一番リターンを上げる日はボトムをつけてから一週間以内に起きることが統計で分かっています。このボトムをつけるつまり『稲妻が輝く瞬間』に市場に居合わせていなければ、多くのリターンを取り逃すこととなります。
「勉強しなければならないと思いながらついついスマホをいじってしまう」
「ダイエットをしないといけないと思いながら、お菓子に手が伸びる」
このように人間は非合理な生き物です。資産運用についてもチェックリストを用意して防ぐのが賢明です。
- 都合の悪いことを軽視し、自分の都合のよいように物事を見る
- 印象的な出来事や大きなニュースを重要視しすぎる
- 自分の技術や知識、判断力を過大評価し失敗しても学ばない
個人投資家は単独でいるため、人間の感情がもろに出てしまい、感情を落ち着かせることが難しかったです。
現在では、SNSやWebから様々な情報を取得することができます。
それらの情報には投資へのリスク許容度が自分と大きく違う情報があったりと、精査する必要があります。
この難点は、正しい情報を見る目を養うことができれば、自分の感情を落ち着かせることも十分可能だと思います。
暴落時の精神安定と引き換えに失う資産

1980~2016年までの36年間において、最もリターンが高かった10日間を逃すだけで、S&P500のリターンの平均水準は11.4%から9.2%へと低下しました。
これは、5,000日の取引日の0.2%となる10日だけで、約2%もの利益を失う事になります。
投資する期間が世代間で行われると想定した場合には、72年間のうち5日を逃し、配当を再投資しない場合は複利で50%近く損します。
さらに、過去112年間では10日を逃しただけで利益の3分の2が吹き飛びます。
- 36年間(収益差:▲2.2%)
逃し日数:10日 - 72年間(収益差:複利で50%の損)
逃し日数:5日 配当再投資なし - 112年間(収益差:▲2/3)
逃し日数:10日
生涯を通じた投資プラン
人間はいつか必ず死にます。これが機関投資家と大きく異なる点です。
個人投資家は働いて収入を得て、限られた期間で『貯蓄』と『投資』を行い、引退するとその資産で、その先何年になるかもわからない人生の設計をしなければなりません。
資産を”贈与”や”相続”で残したとしても、受け取った側に精神的な影響と金銭面の影響が大きくなることがあります。莫大な富は良くも悪くも大きな力を持ちます。
「子供に残す理想的な金額は、それで(したいと思う事を)できる額であり、何もしなくてもよい、と思わせてはいけない」
出典:敗者のゲーム 26章
子供への贈与や相続を考える時に考える事は、大きな遺産は子供に大金を稼ぐ経験を奪うという事になるのです。
本書の残念なところ

インデックス投資について、読みやすくそして、わかりやすく書かれている本書ですが、残念な部分もあります。それは、『税金』や『減税措置』について、米国のものという事です。
デメリットを補う
しかし、書かれている内容は日本の減税制度にあてはめれば理解することができますし、”NISA”や”iDeco”で減税制度を取り入れることができます。
この記事には書いていない、インフレについて『敗者のゲーム』に書かれていますので。それらを加味するとこの内容でも十分頷けます。
書物は自分だけでなく、子供も手を取る可能性があります。もし、子供が資産運用について難解な書籍を読んでしまうと、資産運用にアレルギーがでそうです。
しかしながら、『敗者のゲーム』は、難解な数字を使うことなく、例え話で受け入れやすく書かれています。資産運用の初めに是非とも読んで欲しい良本でした。子孫のためにも書棚に置いておきたい一冊です。
購入する際は下を踏んで頂けたらめちゃめちゃ嬉しく思います。
この記事で紹介できた部分は『敗者のゲーム』の一部でしかありません。
本書の魅力を5分で解説するのは少々無理があったかと、感じています。本書が気になった方は是非、書籍をご覧ください。
まとめ
記事が、タメになったと思われたら、“SNS” や “リンク” で紹介して頂けると今後の励みになります。
共に学んで豊かになりましょう!それでは、また!!
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