
米国の石油・天然ガス企業のアンテロ・リソーシズについて解説します。
アンテロ・リソーシズは米国で液化天然ガスの生産量2位のシェール株関連企業です。
アンテロ・リソーシズ(AR)基本データ
社 名 | Antero Resources Corp |
本 社 | アメリカ コロラド州 |
ティッカー | AR |
セクター |
Energy:エネルギー
|
創 立 | 2002年 |
上 場 | 2013年(NYSE) |
時価総額(USD) | 6.329 Bil(2022.2.11) |
事業概要
アンテロ・リソーシズは“米国”と“カナダ”の石油・天然ガスおよび液化天然ガスの開発と生産に従事しています。同社はアパラチア山脈地方や、マーセラス(ペンシルバニア州~ウエスト・バージニア州)に天然ガス田を保有しており、生産コストは他社より低く抑えられています。
アンテロ・リソーシズの推定確認埋蔵量は17兆6,000億立方フィート(2020年末)。平均生産量は日量約35億7,800万立方フィートで、内訳は天然ガスが67%、液化天然ガスが33%となります。

アンテロ・リソーシズの天然ガス田があるアパラチア山脈では生産量が断トツです。
アンテロ・リソーシズの業績

決算 | 売上高 $ Mil | EPS |
2018/12 | 1,197 | -0.39 |
1Q | 1,019 | 3.17 |
2Q | 906 | 0.14 |
3Q | 850 | -2.86 |
2019/12 | 873 | -1.61 |
1Q | 704 | -1.19 |
2Q | 588 | -1.73 |
3Q | 798 | -1.99 |
2020/12 | 994 | 0.21 |
1Q | 1,205 | -0.05 |
2Q | 1,143 | -1.70 |
3Q | 1,540 | -1.75 |


CF($ Mil) | 営業利益率 | ROE | ROA | 営業CF | 投資CF | 財務CF | 現金・現金等価物 |
フリーCF
|
2013/12 | -17.00% | -0.70% | -0.40% | 535 | -2,674 | 2,137 | 17 | -521 |
2014/12 | 23.10% | 16.90% | 7.40% | 998 | -4,090 | 3,320 | 246 | -611 |
2015/12 | -32.10% | 18.20% | 7.30% | 1,006 | -2,298 | 1,069 | 23 | 310 |
2016/12 | -22.40% | -13.90% | -6.00% | 1,241 | -2,395 | 1,162 | 32 | 74 |
2017/12 | 10.00% | 8.50% | 4.20% | 2,006 | -2,462 | 452 | 28 | 1,072 |
2018/12 | 16.50% | -5.00% | -2.60% | 2,082 | -2,351 | 240 | 0 | 1,360 |
2019/12 | -3.30% | -4.60% | -2.20% | 1,103 | -1,041 | 558 | 0 | 935 |
2020/12 | -25.80% | -19.90% | -8.90% | 736 | -530 | -206 | 0 | 688 |
21年3Qの決算は、売上高:$534 Mil 営業利益:▲$684 Mil となります。
営業損失額の大半は、デリバティブ取引によるものです。天然ガス価格が減少しても利益が出るように、ヘッジをかけています。しかし、22年1月にはヘッジは半減させ、22年1Qには1倍を下回るとガイダンスがありました。
天然ガスの今後
“シェールガス”は”シェールオイル”の採掘時に同時に採掘することとなる副産物となります。
現在、“石油”の上昇が起きており、シェールオイルの採算が合っています。

こちらは石油の先物価格です。1バレル40程度~50ドルがシェールオイルの損益分岐点と言われています。
OPECは3月まで石油の増産を約束していますが、1月の増産は計画に達成していません。その理由は、武装組織による妨害で生産が難しいのが現状です。
SDGsと天然ガス
地球温暖化防止の観点から、持続可能な社会を目指すために、エネルギーについても脱炭素化の需要が高まっています。液化天然ガス(LNG)は二酸化炭素の排出量が他の化石燃料よりも少なく、大気汚染の原因となる硫黄酸化物(SOx)の排出量はゼロ、窒素酸化物(NOx)も少ないといった特徴を持っています。
更に、欧州が『天然ガス』『原子力』について、条件付きではあるものの、持続可能なエネルギーと位置づけ、今後も脱炭素社会へ向け中心的なエネルギーとしての役割が期待されています。
米国のLNG輸出量予想

天然ガスは化石燃料の中で、温室効果ガスの排出が少ない事もあり今後輸出が増えていくと見られています。米国の天然ガス輸出量は2018年から徐々に増加傾向です。
天然ガスの価格推移
現在、“石油”の上昇と同じく“天然ガス”についても価格の上昇が起きています。

地層深くにあるシェール層から、オイルを採掘する技術は2004年から本格的に技術開発が進みました。天然ガスは2008年頃まで、石油価格と相関性が高く価格が上昇してきました。2004年には、シェールオイルの採掘方法の研究開発費がかさんでも採算が合う事から、採掘技術の開発が一気に進みました。
2008年からは大手石油企業も開発に動き出し、石油と比較して天然ガスは安価となりました。シェールオイルに危機感を抱いたOPECによる原油増産も実施され、価格の低下に拍車がかかり、赤字続きのシェールオイル関連企業は相次いで倒産しました。
ウクライナ危機
ウクライナで戦争が起きると、ロシアへの経済制裁としてパイプラインの稼働認可が停止したままになり、既存のパイプラインも制限される可能性があります。
そうすると、欧州の需要が米国エネルギー会社へ特需として降りてきますので、価格の更なる高騰が見込めます。
ウクライナ危機については関連記事に解説リンクを貼っておきます。
アンテロリソーシズの今後
ウクライナ情勢が同社の営業利益を押し上げる事が見込まれます。ウクライナで戦争が始まると、ロシアの禁輸政策が取られます。世界の天然ガス輸出量では、ロシアが1位(2021)となります。
ロシア産天然ガスの輸出先は欧州が1位で約53.5%となります。欧州の禁輸も視野に入って来ることで、天然ガス市場が高騰し、それに伴って同社の業績も好調になります。
今後の決算に注目して、業績に株価が反応するようであれば、短期投資が視野に入りそうです。
まとめ
共に学んで豊かになりましょう!それでは、また!!
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