こんな疑問がある方のために、記事を書きました。

今回のFOMC議事録でなぜそんなに動揺しているの?と疑問を持っている方へ向けて記事を書きました。
4月のFOMC後のパウエル議長会見で、ある記者がQT〔1〕について質問がありました。
その時のパウエル議長の返答に「4月の議事録を見て欲しい」とQTについて議論している事を暗に示しました。この時のパウエル議長の発言とおり、議事録にQTについて記載があり、この議事録に記載されていた規模が実施されると市場の影響が大きいと危機感を覚えました。
今回の記事は過去のQTの規模と今回行われる可能性があるであろうQTの規模を比較し、市場への影響を考えてみます。
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FRBの議事録はこちら
〔1〕:QTとは、Quantitative tighteningの略で量的引き締めのことを指します。(中央銀行のB/Sを縮小していくこと)
〔2〕:ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)
ブレイナードの発言
FOMCの議事録が公開される前日に、FOMCの副議場であるブレイナード氏の発言で市場は下落しました。
ブレイナード氏はハト派〔3〕として知られています。
〔3〕:ハト派を簡単に言うと、意見が『量的緩和寄り』と言う意味です。対義に位置する考えとしては『タカ派』と言われています。
FOMCメンバーの金融政策スタンス

3月に行われるFOMC開始前となる、2022.2に利上げ0.5bp発言で市場を下落を引き起こした”ブラ―ド氏”はメンバーの中で最も『タカ派』と言われています。
本来であれば、タカ派として有名なため市場の反応は限定的であるはずが、S&P500は約10%の下落となりました。この市場の反応から、読み取れるの事は現在の市場はチョットした悪材料が出ると、市場が過敏に反応する不安定な相場だと見えます。
発言趣旨
今回、発言があったブレイナード氏は最も『ハト派』と市場関係者に認識されているので、この発言は大きな意味合いを持っているとして、注目されました。
原文はこちらです。
この発言を受けて、米国指数は一日で1.26%下落しました。
QTが注目される理由
ここまで、QTが注目されているのには、FRBのバランスシートと株価の関係が強い相関関係があるからです。
こちらはFRBのバランスシートと米国指数のチャートです。

網掛けの部分は量的緩和を継続的に行っている時です。短期間にQEを一気に行った場合であると、株価の下落を押しとどめることは出来ませんが、継続して緩和(B/Sシートの拡大)を行うと株価は上昇している事が分かります。
前回のQT
ここで気になるのが、前回に米国市場で初めて行われたQTについてどうだったか気になります。
下のキャプチャーが前回のQT実施時における米国指数の反応です。

期間:2018年2月~2019年9月
利上げ:あり
利上げの1回目の後に5%の下落が起きています。その後にQTが始まりました。
QTが始まった事を引き金として直接的な株価の下落はありません。しかし、QTが行われている期間となる2018年10月から2019年初頭にかけて15%の下落が起き、9月終わりにはベア相場入りしたこともあり、QTが終わりました。
つまり、QTが行われている時は、小さな悪材料で市場が大きく反応しやすくなると言えます。
2022年のQT

前回のQTは約2年間に渡り$1 Triの縮小となりました。
前回との比較
前回のQTは2017年から始められ、米国債を$6 Bil、MBS〔4〕を$4 Bilを上限に段階的に上昇させ、米国債$30 Bil、MBSを$20 Bilに達するまで四半期ごとに金額を増やしていきました。
今回のQTは米国債$60 Bil、MBSを$35 Bilを上限にする$95 Bilと前回の$50 Bilと比べ約2倍となります。
このペースでいけば、1年で$1.1 Triの縮小となります。コロナショック前は$4.5 Triのため、このペースでいけば4年間続ける必要があるため、FRBは前回のレベルまで落とすつもりは無いと考えられます。
〔4〕:Mortgage Backed Securityの頭文字で、『不動産担保証券』や『住宅ローン担保証券』と言われ、住宅ローンの元本や利子の返済資金を裏付けとして発行された証券の事です。住宅ローンの債権をまとめ、投資家に販売するようにしたものがMBSで、住居の支払いが保証されているため信用力の高い債権とされています。
2022年のQT規模

こちらのキャプチャーは前回のQTで、赤の枠がQTの上限です。棒グラフがFRBが所有する債券の量となり、薄い青は債券を繰り越して買付した場合で、濃い青が償還させた、つまり金融引き締めした量となります。

緑色が『MBS』、紫色が『米国債』となります。
前回QTが行われた時のバランスシートが約$4.5 Tri であることを考えると現在は約$9 Triであるから、QT縮小ペースは2倍ですが、規模的には同じように感じます。
更なる悪材料は?
現在の所、FRBから『売りオペ』について言及されていません。仮に売りオペが言及されると、株式が急落するおそれがあります。その理由は債券市場の需給のバランスが崩れてしまいます。

『売りオペ』を解説すると、上のキャプチャーで言うと、赤ラインに到達しない債券を売る事です。
つまり、償還期限を迎えていない債券についても上限に達する必要があるために、”積極的”に売っていくという事が必要となります。そうすると、需給のバランスが崩れるため、債券相場が急落し、債券利回りが上昇します。
今回の議事録では、もっと大きなQTを行いたいが、仮に上限を上げたとしても債権の償還期限がこないため、行いたくても出来ない。
FRBが真剣にB/Sシートを縮小したいと考えると、次の段階では、“上限の引き上げ”と上限に達するために、“『売りオペ』”に発展する展開です。
FRBの議事録
- ウクライナ情勢があるため、0.25%の利上げに留める
- 2017~2019のQTより早いペースで行う(想定済み)
- 一部の参加者はQTには月々の上限は設けなくて良いと述べた
- 国債の上限は$60 Bil MBSの上限は $35 Bilが適切で合計$95 Bil
FRBの議事録はこちら
利上げについては、『ウクライナ情勢があるため』としていました。次回のFOMCではウクライナ情勢による影響は前回より小さいため、50bpの上昇が行われる見込みです。
まとめ
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共に学んで豊かになりましょう!それでは、また!!
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